INVESTMENT COMPASS / 投資のコンパス
東京市場で最も多いのはドル円の売買ではない?為替スワップ58.5%の地形|2026年9月版
この記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の通貨・取引手法・FX会社の口座開設を勧誘するものではありません。外国為替証拠金取引は元本が保証された取引ではなく、為替相場の変動により預けた証拠金を上回る損失が生じることがあります。制度・数値・取引条件は変更されることがあり、本文の数値は2026年9月時点で各機関の公式資料に掲載されていたものです。取引の前に必ず各社の契約締結前交付書面と公式の最新情報をご確認のうえ、ご自身の責任で判断してください。
結論から言うと、東京の外国為替市場でいちばん取引されているのは、ドル円の売買そのものではありません。為替スワップという、資金を貸し借りするための取引です。東京外国為替市場委員会が2026年8月12日に公表したサーベイによれば、2026年4月中の1営業日平均取引高は合計4,690億米ドル。そのうちスポットは1,262億米ドルで26.9%にとどまり、為替スワップが2,741億米ドルで58.5%を占めていました。草原で言えば、道を行き交う群れの半分以上は、市に売りに行く羊ではなく、隣の谷へ預けに行く羊だったということ。数字の内訳を開いて、自分がどの帯に立っているのかを確かめます。
東京市場では1日にいくら動いているのか?
2026年4月中の1営業日平均取引高は、合計4,690億米ドルでした。前回調査にあたる2025年10月中は4,400億米ドルでしたから、6.6%の増加です。調査を行っているのは東京外国為替市場委員会で、報告金融機関は29社。実施は毎年4月中と10月中の年2回と決まっています。
過去の回も並べておきます。2022年10月中が5,001億米ドル、2023年4月中が4,271億米ドル、2023年10月中が4,257億米ドル、2024年4月中が4,495億米ドル、2024年10月中が3,992億米ドル、2025年4月中が4,621億米ドル。凹凸はありますが、4,000億から5,000億米ドルの帯を上下している、という眺めになります。
単位に一言。この表の単位は億米ドルで、1営業日あたりの平均です。年間でも月間でもありません。4,690億米ドルが毎営業日、東京というひとつの市場だけで動いている、と読みます。
いちばん多いのは、どの商品なのか?
内訳はこうなっていました。
| 商品 | 2026年4月中 | シェア | 2025年10月中 | そのときのシェア |
|---|---|---|---|---|
| 為替スワップ | 2,741 | 58.5% | 2,668 | 60.6% |
| スポット | 1,262 | 26.9% | 1,104 | 25.1% |
| フォワード | 530 | 11.3% | 452 | 10.3% |
| 通貨オプション | 111 | 2.4% | 120 | 2.7% |
| 通貨スワップ | 46 | 1.0% | 56 | 1.3% |
| 合計 | 4,690 | 100% | 4,400 | 100% |
為替スワップが2,741億米ドルで、スポットの2倍を超えています。私たちがチャートを開いて見ている値動き、つまり「いま買って、いくらで売る」という取引は、市場全体の4分の1強でしかない。残りの4分の3は、資金の受け渡しの時期をずらしたり、持っている外貨建ての資産のリスクを打ち消したりするための取引です。
数字が動く向きも見ておきます。前回からスポットは1,104億米ドルから1,262億米ドルへ増え、シェアも25.1%から26.9%へ上がりました。いっぽう為替スワップは金額こそ2,668億米ドルから2,741億米ドルへ増えていますが、シェアは60.6%から58.5%へ下がっています。金額が増えてもシェアが下がることがある。比率だけを見て「減った」と読むと、逆の結論にたどりつきます。
為替スワップとは、誰が何のために使うのか?
取引の相手方から逆算すると見えてきます。同じサーベイで相手方別に分けると、対金融機関取引が4,252億米ドル、対非金融機関取引が438億米ドルでした。事業会社などを相手にした取引は、全体の1割弱にすぎません。
さらに対金融機関のほうを割ると、対インターバンク取引が3,544億米ドル、対その他金融機関取引が708億米ドル。取引の主戦場は、金融機関どうしの資金のやりくりだとわかります。対インターバンク取引の内訳では為替スワップが2,368億米ドルで66.8%を占めており、全体の58.5%よりさらに高い比率でした。
対非金融機関のほうは、まったく違う顔をしています。438億米ドルのうちスポットが226億米ドルで51.7%、フォワードが80億米ドルで18.2%。為替スワップは118億米ドルの26.9%にとどまります。事業会社は「実際に外貨を売買する」ために為替市場へ来ており、金融機関は「資金を融通する」ために来ている。同じ市場でも、来ている理由が違うわけです。
個人が見ている板は、どの帯にあるのか?
正直に書くと、このサーベイの数字の中に個人の取引を名指しで拾える欄はありません。報告するのは29社の金融機関で、区分は相手方の種類までです。個人向けの店頭FXの取引高は、別に金融先物取引業協会が月次で公表しています。
それでも位置関係はつかめます。私たちがチャートで見ているレートは、対インターバンク取引3,544億米ドルの世界でつけられた値を、業者が受け取って提示しているもの。スポットの帯(1,262億米ドル)は市場の26.9%で、そのうちインターバンクが806億米ドルを占めます。個人の売買は、その帯のさらに下流にぶら下がっている、という関係です。
取引の集中度も併せて見ておきたいところ。同サーベイの集中度の表では、合計取引高に占める上位1〜8先のシェアが63.9%、上位9〜15先が23.2%、上位16〜22先が10.9%、下位の上位23〜29先が2.0%でした。対非金融機関取引に限れば上位1〜8先で91.4%。29社のうち8社で市場の3分の2が動いているということになります。
取引の方法にも変化があります。対金融機関取引のうち電子取引は2,199億米ドルで51.7%、対非金融機関取引では220億米ドルで50.3%。どちらもほぼ半分が電子取引で、対その他金融機関取引にかぎると471億米ドルの66.6%まで上がっていました。
通貨ごとに見ると、何が起きているのか?
通貨別の表も公表されています。片側にその通貨が入っている取引を集計したもので、こちらの単位も億米ドルです。
| 通貨 | 合計 | 前回比 | うちスポット | うち為替スワップ |
|---|---|---|---|---|
| 米ドル(USD) | 3,814.9 | +5.3% | 1,045.0 | 2,239.1 |
| 円(JPY) | 3,512.7 | +9.5% | 1,025.7 | 1,922.4 |
| ユーロ(EUR) | 764.2 | +10.9% | 154.7 | 498.0 |
| 豪ドル(AUD) | 269.2 | ▲12.5% | 80.6 | 149.1 |
| 英ポンド(GBP) | 252.3 | +3.7% | 58.1 | 172.2 |
| トルコリラ(TRY) | 47.1 | +67.3% | 4.6 | 41.3 |
| NZドル(NZD) | 42.6 | ▲45.4% | 9.7 | 30.1 |
目を引くのはトルコリラでした。合計47.1億米ドルで前回比67.3%増。しかも内訳の大半、41.3億米ドルが為替スワップです。高金利通貨として個人に知られている通貨ですが、東京市場で動いている量のほとんどは、売買ではなく資金の融通の側にありました。トルコリラのスワップポイントをどう見るかはトルコリラのスワップ生活は可能?政策金利43%の現実で数字を並べています。
逆に減ったのがNZドルで、42.6億米ドルの45.4%減。豪ドルも269.2億米ドルで12.5%減でした。個人にとってなじみのある通貨ほど取引量が多い、という関係は成り立っていません。ユーロは764.2億米ドルで10.9%増と、豪ドルの3倍近い規模があります。
この数字は、草原の何にあたるのか?
群れの数を数えて何になるのか、と思われるかもしれません。私が意味があると考えているのは、次の3つです。
- 値動きの理由を1つに決めつけなくなる。市場の58.5%が資金繰りとヘッジの取引なら、ある時間帯の動きが相場観とは無関係な事情で出ていることもある、と考えられます。
- 自分の取引の大きさを正しく見積もれる。1営業日平均4,690億米ドルという規模に対して、個人の建玉が値をつくることはありません。板を動かす側ではなく、板を読む側だと確認できます。
- 数字の出どころを疑う癖がつく。この記事の数値はすべて公表資料の表から拾ったもので、通貨ペア別の合計のように表に無い数字は当ブログの計算だと明記しました。
ドル円について1つだけ計算を足しておきます。通貨ペア別の表では、ドル円のスポットが840億米ドル(ドル円の中で30.2%)、為替スワップが1,522億米ドル(54.7%)、フォワードが301億米ドル、通貨スワップが43億米ドル、通貨オプションが75億米ドル。足すと2,781億米ドルで、これが東京市場のドル円の1営業日平均になります。この合計値は当ブログが表の各行を足したものであり、公表資料が合計として掲げている数字ではありません。
数字を読むとき、何に気をつければいいか?
- 単位と期間を先に確認する:億米ドル、1営業日平均、調査対象月は2026年4月中。年間の数字ではありません。
- 金額とシェアを分けて読む:為替スワップは金額が増えてシェアが下がりました。どちらか一方だけでは向きを誤ります。
- 前回との比較の間隔を見る:この調査は年2回で、比較相手は半年前の2025年10月中です。月次の統計と混ぜて論じられません。
- 公表値と計算値を分ける:通貨ペア別の合計のように、表に無い数字を出すときは計算だと書く。
- 個人の取引高は別の統計で見る:店頭FXの取引高は金融先物取引業協会が月次で公表しています。
経済指標との向き合い方は経済指標発表を生き延びる草原のサバイバル術に、スワップポイントの仕組みそのものはスワップポイントで長期保有するという考え方に道順を置いています。
よくある質問(FAQ)
- Q. 東京外国為替市場の1営業日平均取引高はいくらですか?
- 東京外国為替市場委員会が2026年8月12日に公表した「東京外国為替市場における外国為替取引高サーベイ(2026年4月中)」では、1営業日平均の合計取引高は4,690億米ドルでした。前回調査(2025年10月中)の4,400億米ドルから6.6%の増加です。報告金融機関は29社で、調査は毎年4月中と10月中の年2回実施されています。
- Q. 取引高の内訳でいちばん多い商品は何ですか?
- 為替スワップです。2026年4月中は2,741億米ドルで、シェアは58.5%でした。次いでスポットが1,262億米ドル(26.9%)、フォワードが530億米ドル(11.3%)、通貨オプションが111億米ドル(2.4%)、通貨スワップが46億米ドル(1.0%)と続きます。
- Q. 個人のFX取引はこのサーベイに含まれますか?
- このサーベイの報告主体は29社の報告金融機関で、その取引を集計したものです。区分は取引相手の種類(対金融機関・対非金融機関)までで、対非金融機関取引は438億米ドル、全体の9.3%にあたります(当ブログによる計算)。個人向けの店頭FXの取引高は、別に金融先物取引業協会が月次で公表しています。
- Q. 取引高は特定の金融機関に集中していますか?
- 集中しています。同サーベイの外国為替取引集中度では、合計取引高に占める上位1〜8先のシェアが63.9%、上位9〜15先が23.2%、上位16〜22先が10.9%、上位23〜29先が2.0%でした。対非金融機関取引に限ると上位1〜8先が91.4%を占めています。
- 東京外国為替市場委員会「東京外国為替市場における外国為替取引高サーベイ(2026年4月中)の結果について」2026年8月12日公表(2026年9月9日確認):https://www.fxcomtky.com/survey/pdf_file/2026/survey_202608.pdf
- 東京外国為替市場委員会 サーベイ一覧(2026年9月9日確認):https://www.fxcomtky.com/survey/
- 金融先物取引業協会「店頭FX月次速報」(個人向け店頭FXの取引高/2026年9月9日確認):https://www.ffaj.or.jp/library/performance/fx_flash/
※ドル円の合計2,781億米ドル、および対非金融機関取引が全体に占める9.3%は、公表資料の各行を当ブログが足して求めた計算値です。公表資料が合計として掲げている数字ではありません。